寒中見舞い、申し上げます
寒さの折1人でも多くの方々に幸がありますように、心よりお祈り申し上げます。
昨今、日本国内では物価高や人件費アップの話題が尽きませんが、本質はどうなのでしょうか? 買い手側は1円でも安く仕入れたがために、大手は中小零細企業の不利な状況を見通して買い叩く、一般消費者も生産者の苦労(利益)など理解せず、値引きさせて満足感を得る、、、”適性価格”とは何でしょうか? どちらか一方だけが潤えば良いのでしょうか?
また、税金を取られたら損、社会保険料を取られたら損、他利のためは損、少しでも自分が苦しくなるとすぐ放り出してしまうなど、自利のためだけの主張が多いように感じます。
世界に目を向ければ、21世紀になっても、戦争はなくなることはなく、人が人を殺し合っています。国内に目を向ければ、自然災害で未だに多くの方々が悲惨な生活を強いられ、哀しみに打ちひしがられています。そんな状況でも、誰かが誰か以上に歯を食いしばり、努力して成果を出しているからこそ、世界が、日本が、会社が、家庭が回っているのではないでしょうか?
賃金が上がり、国民の生活が潤っていくのは大いに歓迎します。しかし、そこには”努力”が伴うんだよという議論や報道をしっかりすべきではないでしょうか? ひな鳥のように、口を開けていれば餌が放り込まれるだけを望むようでは日本の未来はありません。
昨年10月18日の記者会見で、経済同友会の新浪剛史代表幹事が、最低賃金の全国平均1,500円への引き上げに関し「上がらないと駄目でそれを支払わない経営者は失格だ」と述べていました。また「できない企業は退出し(労働者が)払える企業に移る方が人々の(の質)も上がる」とも述べていました。
これは、完全なる中小零細企業への愚弄とも思える、極めて遺憾な発言だと考えます。また、努力しない人は、切り捨てるということです。
中小零細企業は、同族経営が多く、大手企業のように、任期が終われば後は関係ないという訳にはいきません。弊社も創業77周年を迎え、現体制で4代目となります。ここまで来るには決して平坦な道ではなく、先人たちの血と汗と涙と、並々ならぬ努力があったからこそです。また、創業家で暮らす者たちも、少なからず生きづらさなど色々な葛藤の中で人生を過ごしています。最低賃金1,500円支払えない経営者でも、最低賃金1,500円貰えない従業員でも、その会社を誇りに思い、会社を愛している方たちは大勢います。また経営者の中には、私財を担保に借入等し、人生全てを掛けている方々も多く居ます。そんな背景を理解した上かどうか知りませんが、経済同友会の新浪剛史代表幹事の今回の発言は、到底承服出来る発言ではありません。発言を撤回して、直ちに経済界を退出すべきです。
このお方のように、大企業だけ残って中小零細企業が消滅した所でどうってことないと思ってる思考のお方が経済界に居座っていては、日本の中小零細企業は疲弊する一方で、結果として日本の国力は衰えて行ってしまうと強く危惧しています。
中小零細企業からコストアップ要求をするなんて、殆どの企業が出来ていないのが実態です。私どもも要求はするものの、大手顧客からは、コストアップの納得出来る根拠を示せと言われ、人件費、加工費、材料費、ましてや利益率まで開示しろと要求をされ、丸裸にしようとしてきます。当然、開示出来る訳もなく、開示しなければ却下されてしまいます。中には、「他社は、利益率〇〇%でやってるけど…」と価格だけで一緒くたにされ、圧力をかけられます。大手企業は、決算書公開義務などあり、その感覚で中小零細企業に詰め寄って来ます。中小零細企業は、深刻的な人手不足で、且つ、利益を搾り取られている状況で、要求された資料作りに専念させる人材を雇う余裕もなく、ただパワーバランスで高圧的に迫られたら、中小零細企業は大手に服従するほかありません。後継者が居ない企業は、疲弊してこれを機に廃業や倒産など会社を畳んでしまうでしょう。また、この歪んだ経済の構図を冷静に見ている現経営者は次世代の者たちへ事業承継を躊躇したり、次世代の者は、起業や事業承継を拒んだりすると思います。
このような状況下で、毎年当然のようにコストダウン要求してくる大手企業や、「最低賃金1,500円支払えない経営者は去れ」と発言してる経済同友会の新浪剛史代表幹事は、馬鹿げています。このままでは、本当に日本のものづくりは崩壊してしまいます。仮に、経済同友会の新浪剛史代表幹事が仰るように「中小零細企業のような泥船なんか降りて、うちの企業の傘下に入れば賃金沢山あげるよ」と言って、どれだけの人たちがそちらに乗り移ると思っているのか、、、新年1月7日の経済3団体の祝賀会後の囲み取材で新浪剛史氏は、「今年も賃金上げますか?」との質問に、『労働組合と調整しながら考えます』と仰っていました。中小零細企業に対しては強い言動にも関わらず、自分のことになると弱腰姿勢。『私は、雇用形態に関係なく全従業員に対して本人受取の最低賃金〇〇円にします! 〇〇%アップします!』と何故、明言しないのか? 少なくとも、私はそのような雇われ経営者の元で働くのは断固拒否します。
中小零細企業は、従業員を家族同然と考えている経営者ばかりです。弊社は従業員数100名弱ですが、私は全従業員の名前も顔も分かります。元気なさそうだったり体調が悪そうだったりすれば声を掛けます。そんな家族を安い単価でこき使って儲けてやろうと思っている経営者なんて殆ど居ないはずです。従業員に少しでも利益還元して生活を豊かにさせてやりたいのに、それを阻止しているのは一部の大手企業であり、独裁者的な思考を持つ、経済同友会の新浪剛史代表理事だと思います。
中小零細企業が、積極的に最低賃金1,500円以上支給出来るようにするには、国が主導して大手に圧力を掛け、取引先に無条件で一律〇〇%コストアップしろと命令するほかないと考えます。そこから先の更なるコストアップ要求は、各社の交渉力だと思います。
物価が上がれば賃金が上がる、賃金が上がれば物価が上がる、人が生産活動している以上、当たり前の構図です。
中小零細企業の皆様、日本経済を支えているのは私たち中小零細企業です。私たちは使い捨てではありません。旧態依然の様々なしがらみや圧力などありますが、権威主義に屈することなく、誇りと信念をもって、日本国のため、愛する家族のために、誠心誠意、一生懸命努力して、喜んで働いて、自らの力で活路を見出し稼いで行きましょう!
そして、我先にと米びつの中の米を取り合うような醜い争いはやめ、皆で多少の負担をして、本当に困っている人を助け、本来の強く美しい村社会を取り戻して行きましょう。
そして、正直者が馬鹿を見ることがないように、必死に努力した者が報われる社会になってほしいと切に願います。
創研工業株式会社
代表取締役 澁谷忠臣